虹の基本

虹は誰しもが知っている大気光学現象です。 ふと気がついたら,目の前に巨大な虹が現れて,足を止め思わず写真をとってしまった。 そんな経験は誰しもしたことがあるのではないでしょうか。

このページは,そんな虹をさらに楽しむためのヒントを紹介します。 虹を科学的に理解することで,「ただ見て美しい」というレベルから「科学的視点でみる面白さ」へステップアップすることを目標に,記事を作成しました。 さあ,虹の世界を覗いてみましょう。




まずは、虹の写真から

美しい虹の写真を集めました。 これらの写真は,2017年9月から続けている拙サイト「ブログ版 科学する空」内の 虹タグで全て参照することができます。

  虹   虹   虹
人生で初めて出会ったパーフェクト・レインボウ。主虹・副虹もしっかり出ている。この日は,すごい虹が出ることを直観して堤防へ車を走らせ待機。その読みが的中した時の快感たるや筆舌に尽くし難い。
2018年8月12日( 詳細記事 )
望遠レンズで虹の付け根を撮影。この時の太陽高度は数度で,虹の付け根はほぼ直角に立っていた。
2018年8月12日( 詳細記事 )
地平線より下に生じた貴重な虹の写真。詳しくはこちらをクリック。
2018年8月12日( 詳細記事 )
  虹   虹   虹
太陽高度が約26度の時の虹。太陽高度が高いほど,虹は低くなる。詳しくはこちらをクリック。
2019年3月17日( 詳細記事 )
乱層雲による本格的な雨,ではなく,積雲から生じる降水雲による時雨によって生じた。冬季に観測する虹はほとんどこのパターン。
2019年3月17日( 詳細記事 )
近鉄名古屋線に乗車中,突如虹が発生。急遽塩浜駅で降りて虹を記録しました。油断も隙もありゃしない。
2019年10月25日( 詳細記事 )
  虹   虹   虹
望遠レンズで虹の根本を撮影。しかし,本当は虹に根本はない
2019年10月25日( 詳細記事 )
遠方の降水雲にわずかな虹を望遠レンズでスナップ。水平線と雲との間のみに見られるこのような虹のことを株虹(かぶにじ)と呼びます。
2019年12月5日( 詳細記事 )
時雨が生じやすい山間部を車で移動するとよく虹に遭遇する。この写真は助手席の友人が撮影したもの。
2018年8月12日( 詳細記事 )
  虹   虹   虹
あまりにも美しい虹。虹が生じるべき角度に水滴が存在しない時はこのように途切れた虹となる。社会人三日目,通勤途中に思わず撮影してしまった。
2020年4月2日( 詳細記事 )
左の撮影地からもっと降水雲に近づいたため,虹が生じるべき角度に水滴が存在し,美しい全周の虹となった。
2020年4月2日( 詳細記事 )
十分な光が足りなかった時の虹。この数分後,虹は全く見られなくなってしまった。
2020年9月18日( 詳細記事 )
  虹   虹   虹
太陽高度0度(つまり日没直後)の虹。届く太陽光は当然少なく,赤黒い。
2020年7月26日( 詳細記事 )
虹を生じさせる太陽光は,ここに至るまでに大気によるレイリー散乱を受けて,赤系統の光が多く残っている。そのため,生じる虹も赤っぽくなる。このような虹を赤虹と呼ぶ。
2020年7月26日( 詳細記事 )
別の日に撮影された赤虹。この写真は,熱帯低気圧(元台風6号)が通過した後のもの。台風通過後の空は,美しい夕焼けとともに虹が発生するチャンスなので,安全に留意して観察をしてみよう。
2019年7月27日( 詳細記事 )

虹の色の順番

虹

この写真は,2020年11月4日にみられた虹の写真です。 よくみると,虹が二重に出ていることがわかるかと思います。 内側の明るい虹を主虹外側の少し暗い虹を副虹とよびます。 これらの虹をよく観察してみると,色の順番が逆になっていることがわかります。

これらの事実は,一般の人にはあまり知られていないようです。 虹が出ている時に,
「よく見ると,外側にも虹が見えていますよ」 とか 「外側の虹の順番が内側と逆ですよ」
などと一緒にいた人に教えてあげると,大抵驚かれます。 多くの人が知っている光学現象の割には,知られていることが少ないような気がします。

虹が生じる原因

光は異なる媒質に入射すると,それまでの進行方向から少し曲がって進みます。 これを屈折といい,波動現象に特有の性質です。 この時の曲がり具合を屈折率といいます。 屈折率は,光の波長によって異なるため,プリズムなどに光を通過させるとスペクトルが現れます。 これを分光と呼びます。 右の図は,頂角が60°のプリズムに白色光(様々な波長が混ざった光)を通過させた時の分光の様子です。 プリズムで分光する様子
虹の場合,降水雲から落下する雨粒(水滴)がプリズムの役割を果たして,分光が起きます。 しかし,その時の光路は屈折のみの単純なものではなく,水滴内での「反射」も考慮した次のような光路をとります。 主虹は,水滴内で1回,副虹は水滴内で2回反射することで生じます。 この時の光の経路は右の図のとおりです。 多くの解説本では,このような経路によって,主虹や副虹が生じると説明しています。 (本当は,これだけでは虹が生じる理由として不十分ですが...) 水滴内での反射

これを見て,「じゃあ反射回数が3,4回の虹もあるのかなぁ」と思った人はセンスがあると思います。
その読みは正しく,反射回数が3回以上の虹は理論上存在します。
なぜ「理論上」かというと,実際に観測することはほとんど不可能と考えられているからです。
反射回数が増えることで光の欠損が増加し,現実世界で見ることは困難です。
そのため,「虹にはどんな種類があるの?」と聞かれたら,よほどのことがない限り,
「虹は2種類!主虹!副虹!」と思っておいて差し支えありません。

ちなみに,反射回数が3回の虹については,虹ビーズという教材を用いて観測できることを明らかにしました。
詳細は拙書「 虹ビーズを用いた3次の虹の再現実験 」をご覧ください。

虹と空の明るさ


上の写真をご覧ください(マウスオーバーします)
この写真は,2018年8月12日にみられた虹の写真です。 主虹・副虹の両方が割と鮮明に写っています。
さて,ここで二つの虹の明るさに注目してみてください。
明らかに,副虹の方が暗いことが分かると思います。 副虹は,主虹よりも常に暗く,肉眼で見ることができない時もあります。 ある研究では ,副虹の出現率は25%程度とのことです。

(a)主虹 と(b)副虹 の間の部分が,他の空の色と比べて少し暗くなっていることがわかるでしょうか? この(c)の領域を,アレキサンダーの暗帯といいます。

このような明るさの違いが生じるかを説明するには,水滴に入射した並行光線がどのような光路を辿るかを考える必要があります。 簡単に説明すると,(a)主虹 よりも内側に 水滴内で反射した光が, (b)副虹 よりも外側に反射した光が目に届くため,これらの領域は明るくなります。 つまり,(c)の領域は,相対的に(c)暗く見えるということです。 「アレキサンダーの暗帯」と名前がついていますが,実際はこの領域は本来の空の明るさで,主虹の内側と副虹の外側が特別明るいだけにすぎません。

虹の解説図

もっと深く理解するためには「最小偏角」という考え方を知る必要があります。 詳しくは,次のページ「虹の科学(準備中)」を参照してください。




虹の生じる場所

虹の見える場所は,(簡単にいうと)太陽を背にしたところです。 右の図をご覧ください。
実は,虹が生じる場所は,幾何的に決まっています。 太陽光線に対して,約42°のところに主虹が,約51°のところに副虹が生じます。
文字だと分かりにくいので,言い換えます。

主虹は,観察者の影から,42°離れたところに生じ,副虹は51°離れたところに生じます。 そのため,広角レンズを使って虹の写真を撮ると,必ず観察者を中心とした写真が取れます。 ここで,観察者の影を,天球上では対日点と呼びます。
水滴内での反射
虹

虹の大きさ 〜大きな虹?小さな虹?〜

しばしば,「大きな虹が見られた!」などとネットニュースになることがあります。
(例)

大きい虹があるということは小さな虹があるのでしょうか? それは,下の写真のような感じでしょうか?
虹 虹
これは大きな虹?? これは小さな虹??


実は,虹の大きさを特徴付けるのは,角度です。 主虹の場合は42°,副虹は51°です。
この大きさは常に一定で,変わることがありません。 つまり,大きな虹や小さな虹という表現は適切ではありません
言い換えるなら,「背の高い虹」あるいは,「見えている部分が多い虹」といったところでしょうか。

<注>
「大きな虹」という表現を批判しているわけではありません。 ほとんど全ての人が,「大きいなぁ」という感想を持ち,それで十分伝わるからです。
むしろ,上記の表現の方が一般の人には伝わりません。

虹が生じる太陽高度の条件①

虹の動き
(虹の幾何関係HTML)

虹は角度によって特徴付けられるということを説明しました。 上の図をご覧ください。 これは,天球図と呼ばれる図で,中心が地上にいる観測者です。
太陽から観察者に向かって線を伸ばし,天球上でぶつかったところを対日点といいました。 図を見ると明らかですが,太陽の高度が$\theta$なら,対日点の高度は$-\theta$となります。
主虹は,この対日点を中心に約42°のところに生じるのでした。 このことから,主虹が見られる太陽高度の条件は,$\theta< 42^{\circ} $であることが分かります。
また,背の高い見応えがある虹は太陽高度が低い時であることも,上の図を見ると明らかです。


虹が生じる太陽高度の条件②

普通虹は,地表面より下には生じません。 しかし,観測者がずぶ濡れになりながらも(つまり,降水雲直下でも),十分な太陽光があるとき,地平より下に伸びる虹を観測することができます。
例えば,下の写真は2018年8月12日に観測した虹の様子です。 この時,地上より低い位置で虹が生じている様子を肉眼でも確認することができました。 観察している場所ですら大雨で,カメラをどう頑張っても守ることができない降り方でした。
虹

虹のまとめ

以上から,虹が生じる条件は,
  1. 太陽高度が42度よりも低いこと
  2. 対日点方向に雨が降っていること
  3. 太陽光が十分に届くこと
であることがわかりました。
一つ目の条件からわかることは,虹は「日の出・日の入り」のような太陽高度が低い時が観測チャンスであるということです。 また冬は太陽高度が低いため,降水粒子が雪ではなく,雨の時は虹を頻繁に観測することが可能です。 実際に,虹の出現頻度の報告 によると,三重県北部では11〜12月にかけて虹の観測回数が増加するようです。
この結果は,私の統計データとも整合しています。