積乱雲 (Cumulonimbus, Cb)垂直方向に大きく発達し、密度が高く巨大な塔のように発達する雲。通常、上部の一部が平坦(=対流圏界面の可視化)で、繊維状の構造をもつ。かなとこ部分はしばしば羽のように広がる。 積乱雲の雲底は非常に暗いことがほとんどで、ちぎれ雲をよく付随している。 激しい降水が生じており、雷がもたらされることもある。 |
種
Species
変種
Varieties
部分的特徴
Supplementary features
付随雲
Accessory clouds
無毛雲 calvus, cal
積乱雲の発達初期の状態。通常積雲の雄大雲から発生する。雲頂部には繊維状の構造はまだ見られない。通常、積乱雲の無毛雲はにわか雨という形で激しい降水活動が認められる。
手前が積乱雲の無毛雲(Cb初期)である |
かなとこ雲を形成し始める |
多毛雲 capillatus, cap
積乱雲の雲頂部に、はっきりとした繊維状の構造が見られる状態で、巻雲のようば部分が無秩序に生じた状態の雲。積乱雲としては衰退期(最盛期を過ぎた頃)であり、上空の風の流れにしたがってどんどん雲頂部は広がる。 普通はにわか雨や雷雨を伴い、突風やひょうを伴うこともある。 非常に明瞭な尾流雲が見られることもある。
降水雲 praecipitatio, pra
積乱雲はピンポイントに大量の降水をもたらすので、その降水雲は非常に明瞭なものとなる。 降水現象に伴って下降気流が卓越することにより、上昇気流をキャンセルしてしまい発達はストップする。 つまり、降水が始まったら積乱雲としての寿命は残りわずかということである。
発雷も感知している |
降水雲と虹のコラボレーション |
尾流雲 virga, vir
積乱雲からの降水が地上に達していない流線の部分。降水活動の末期などでは地上まで雨が到達できず尾流雲として観察されることもある。 一番多いパターンはかなとこ雲から生じている降水で、途中で蒸発して尾流雲となっていることが多い印象である。
一部が地表に到達せず尾流雲となっている |
かなとこ雲 incus, inc
積乱雲の激しい発達には対流圏界面という頭打ちが存在し、そこに達すると水平方向に広がり始める。この部分をかなとこ雲とよぶ。 三重県では盛夏の時、美濃から静岡にかけて積乱雲が多く発達するのでたくさんのかなとこ雲が観察される。 上空の風の流れにシビアで、対称性の取れた綺麗なかなとこ雲はすこしお目にかかれない。 普段見慣れない雲で、かつ背が高い(=遠い地点でも見られる)ので、ニュースになることも多々ある。 また遠く離れた積乱雲の場合では、かなとこというより「低空に見られる繊維状の何か」といった見た目であり、衛星画像や降水情報、方位を確認しながら判断をされたい。
レーダーの降水分布とも対応している |
目に見えない対流圏界面を可視化している |
乳房雲 mamma, mam
積乱雲本体というよりは、かなとこ雲によく発生する。 積乱雲本体が消滅してかなとこ雲のみが残り広がった場合でも乳房雲を付随していることがある。 Cb以外の乳房雲はレア度が高い傾向があるが、積乱雲の場合はしょっちゅう観察されるため、そこまで珍しいものではない。
普段のそれより濃密かつ大きい |
望遠で観察したらかなとこ雲に乳房雲は普通 |
アーチ雲 arcus, arc
積乱雲の前面下部に生じ、濃密で帯状の形をしている。広範囲にわたると暗く不気味なアーチのように見える。 先端部分は滑らかに見えることがあるが、縁はほつれていることが多い。 降水に伴って冷たい空気が地上に落下し、水平に広がる時の先端部分(=突風前線・ガストフロント)に対応しているため、この雲を目撃したら数分後には積乱雲の強い降水域が到達する。 防災上重要な雲である。
向こうにはたくさんの発雷が見られる |
確かに「アーチ」のように見える |
壁雲 murus, mur
<未観測>ICA2017で新しく加わった雲。 スーパーセル(積乱雲の一種で、日本では滅多に現れない)に付随して生じる。 写真のスーパーセルには、大きな壁雲(murus)が写っており、積乱雲の雲底から局所的に急激に雲が低くなる現象である。 通常は、スーパーセルや激しい多重セルの雷雨の降水がない部分で発達し、強い上昇気流が発生している領域を可視化している。 回転や垂直運動が顕著な壁雲は、漏斗雲や竜巻の形成につながることがある。 画像の右側に見えるのは流入帯雲(flumen)である。
尻尾雲 cauda, cau
<未観測>ICA2017で新しく加わった雲。 スーパーセル(積乱雲の一種で、日本では滅多に現れない)に付随して生じる。 壁雲(murus)に向かって、低く水平に伸びる尾のような形の雲が尻尾雲(cauda)である。 流入帯雲と混合しやすいが、流入帯雲は一般に「壁雲に接続いないこと」「高度が高いこと」「大規模なこと」が挙げられるが、尻尾雲は小規模で高度の低い雲であることから区別したい。
漏斗雲 tuba, tub
<未観測>積乱雲の下部が漏斗状に垂れ下がった状態の雲。空気が上昇する際に鉛直方向の渦が引き伸ばされる(=回転半径が小さくなる)時に生じる。地表に達すると竜巻と呼ばれる。 継続時間が短く、積雲の漏斗雲は非常にレアである。
ちぎれ雲 pannus, pan
積乱雲の下層は自身の降水により高い湿度のため、強い下層の風によってちぎれ雲ができやすい。
頭巾雲 pileus, pil
積乱雲の雲頂部で発生し、しばしばその雲が突き抜ける形で帽子のように見える付随雲。 しばしば複数の頭巾雲が重なって観察されることがある。 湿度が高く、激しい対流活動が見られる夏に多く観察される。 この時の水平方向の広がりが大きくなるとベール雲と呼ばれるようになる。
頭巾雲が生じた |
ベール雲 velum, vel
頭巾雲がさらに水平に広がった時にベール雲という付随雲に昇格する。 雲頂部に一つまたは複数見られることがある。 上昇気流によって副次的に持ち上げられることによって生じるため一般に寿命は短いが、積乱雲がベール雲を突き抜けてもそのまま居続けることもある。
さらに発達をする |